アーカイブ | 2017年4月30日

ミイラ赤ちゃんだった私から、アトピっ子のお母さんたちへのメッセージ

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生まれて半年ちょうどの日、一日炎天下にいたことをきっかけに

私の重症アトピー性皮膚炎の人生は始まりました。

全身真っ赤っか。

体中からドロドロ浸出液が流れ出るので、薬を塗って、包帯を巻いて、

私は目と鼻と口以外は全身包帯だらけのミイラのような赤ちゃんでした。

赤ちゃんでありながら、どこに行っても、誰からも「可愛い!」とは言ってもらえませんでした

せっかくの持って生まれた実力を包帯で隠していましたからね (笑)。

 

あまりに悲惨な姿で、私を不憫に思った母は、

授乳中もその後も、医師に言われた通り、徹底的に食事療法をも試みました。

真面目な母なので、徹底的に、です。

 

当時、なぜか私はお餅が大好きだったらしいのですが、

食事療法を指導する医師から「お餅も絶対ダメ!」と止められていたので、

お正月も家族全員お餅はなし。

食の溢れている現代では、お餅なんていつでも食べられるし、別にごちそうでもなんでもありません。

しかし、昭和初期までの皆さんは、年末に一生懸命働かないと「餅、食えねえぞ!」(笑) と合言葉にするくらい、

お正月にお餅は必須でしたから、相当食べたくなるのでしょうね。

私も家族が食べているのを見ると、「一口でいいから、ちょーだい。」とたどたどしい口調でせがんだらしく、

かくして両親は、お餅が食べたくなると、眠りの浅い私が眠りについた後の夜中に

こっそり居間でお餅を焼いて、コソコソと食べたそうです。(笑) さぞかし、おいしかったでしょうね(笑)。

 

しかし、それくらい徹底的に食事療法もやりましたが、

効果は全くありませんでした

私の症状は全く改善せずに、

家族全員が、痩せました・・・・・。(笑)

 

私も何十年とこの病気をやっていて、

仲間からは “アトピー界のパイオニア” という称号まで戴いているほどですが (笑)、

未だに

「あれを食べたから悪化した。」

「昨日、甘いものを食べすぎたから悪化した。」

などの、共通項をひとつも見つけたことがありません

医学的にはあれこれあるのでしょうが、実体験として、

ことアトピーに関しては何一つ共通項がない、と感じるのが

私たち多くの患者の意見です。

入院中も、患者仲間全員が同じことを言っていました

意見、というより、事実と言った方がいいかもしれません。(もちろん、偏った食事はよくありませんが。)

 

やるべきことをやり切った母も、同じく、

「食事療法だけは意味がないから、何でも食べたらいいわよ。」

と、よく言っていました。

まあ、当時の医学ですから、現代の医学と比較しても、まだまだ研究途上のことだったとは思われますので、

患者側からのひとつの話として、聞き流してください。

 

話しを元に戻します。

 

ミイラ赤ちゃんだった私が一向によくならないので、

当時皮膚科の医師が処方してくれたアメリカから来た値段の高いお薬を、

ひどいところには、「すり込むように塗って。」と指導されて使い始めました。

院内では、いつも先生が直々にその薬だけは塗ってくださって、スペシャル感を醸し出していました(笑)。

 

それが、ステロイドです

 

当時はアトピーという言葉も、ステロイドという名前も、うちの家族しか知らないのでは?(笑)

というくらい、あまり多くない病気でした。

だいたいが “湿疹”、と呼ばれ、幼い頃に炎症が出たとしても、そのうち周りのみんなは治っていたようです。

 

しかし、ところどころに血のにじむミイラ赤ちゃんは、なかなかよくなりません。

両親は私のことが可愛そうで、可愛そうで、

毎日病院に通って包帯を取り換えてもらい、丁寧に、丁寧に、私を育ててくれました。

ステロイドを塗り始めて、少し調子のいい日に、包帯を巻かないと、

ミイラ赤ちゃんはキョトンとしていたそうです。

包帯は自分のユニフォーム感覚だったのでしょうね (笑) 。

 

(それから、ステロイドにより難治化した皮膚炎のために、薬を塗って炎症が引いてはまたぶり返し、

ステロイドを塗らないと日常生活が全く出来ないほど、悪化を繰り返す人生を送ってきました。

4年前にステロイドを止めて、今は健康な人間らしい皮膚が日々作られていることに喜びを感じています。)

 

さて、私が何を言いたいか・・・。

 

私はミイラ赤ちゃんでした

誰にも可愛いと言ってもらえませんでした

 

しかし、私には、

そんな記憶はありません

 

上に記述したことは、全て、今は亡き両親から、昔を懐かしんで話してもらったことです。

私が赤ちゃん時代で覚えているのは、先生が直々にいつも特別な薬を院内でも塗って下さっていたこと。

紫の光を皮膚に当てて治療していたこと。

薬剤師さんが、体全体に塗る(ステロイドではない)軟膏を、当時ガラスの台の上で、

ケーキにクリームを塗るナイフのようなもので丁寧に混ぜていた姿と病院の光景。

そして、薬の臭い、などなど・・・・。

 

目と鼻と口だけ出して包帯していたとしても、呼吸が出来て、食べ物が食べられ、

両親が私をいつくしんで育ててくれたので、

苦しみにのたうちまわった記憶などないのです

 

壮絶な痒みによる不眠や、不快感により、ミイラ赤ちゃんは相当泣いたことでしょう。

それを見ていた両親は(なんとかしてあげられないものだろうか・・・。)と、

自分のこと以上に心を痛めていたのは察するに余りあります。

 

でも、痒くて、痛くて、さんざん泣いた後には、

優しい両親が、私を見つめて抱いていてくれたはずなのです。

 

・・・皮膚炎で、目も当てられない姿になっているお子さんに、胸がつぶれる思いの皆さま。

お子さんにステロイドを処方されて使ってしまい、悪化して切ない思いのお母様(お父様)

 

それでも、大丈夫ですよ!

今、しばらくの辛抱です。

 

見ているだけで、どうしようもなく辛く切なかったとしても、子供って未来にはそんなに(辛さなんかは)覚えていないものなのですよ

 

必ず、よくなります!

 

地球規模でもほぼ最長期間、と言ってもいいくらいステロイドを使ってきた私ですら、ステロイドを止めて、保湿を止めて、

強い皮膚が蘇ったことを心から実感しているのですから。

 

赤ちゃんのアトピーは自然に治るのです。

ステロイドを使うとさっと炎症は引きますが、文字通り引っ込めただけで、その後に難治化します。

私がその生きた見本です

 

何かの意味があって、

きっと、神様か何か目に見えない力が、あなたにわけあって強くなってほしくて

今だけ与えてくれている試練なのです。

これを乗り越えることで、あなたはもっと強くもっと優しくなれるのです。

そうならなければいけないのですよ。

過去の苦しい経験は、未来に生かさなければなんにもならないのですから。

辛い経験の無駄使い(=悔やむこと、嘆くこと)はやめましょう。生かす、しかないのです。

 

今、ステロイドをやめる決断をしたのだから、それでいいのです。

使った過去を悔やむことなどありません。

その時、それが一番いいことなのだと思ってやったことであり、

お子さんを苦しめようと思ってやったわけではないのですから、愛があったのです。

 

愛なのだから、悔やむ必要はありません

 

悔やんで泣いていればお子さんがよくなるのなら、悔やめばいいのですが・・・もちろん、よくなりませんよね?

どんな思いで過ごしても、同じように時が過ぎていく自分の人生を、悔やんだりする時間に費やさないでください。

悔やんでいる時間も、あなたの大切な命の1分です。

 

今の、この、お子様との貴重な闘病のひと時を、

あとで、「いい経験させてもらったわ~~~~。」と笑って語れるように、

ただただ、愛を持ってお子さんを見つめてください

それだけで十分あなたは立派なのです

 

ミイラ赤ちゃんは両親のことを全く恨んでいません

よかれと思って、当時高価な薬を買ってくれていたのです。

辛かった(はずの)闘病は、ミイラ赤ちゃんは覚えていません。

それどころか、ありがたいことしか思い出せません。

 

両親にとって、ひどい炎症に苦しむ子を目の当たりにしながらの子育ては、さぞかし大変だったことでしょう。

それでも、両親は当然のように、自分たちより私には絶対長生きしてもらいたいと思って育てていたはずです。

ちょっと見た目はポンコツ赤ちゃんでも (笑)、

私が命に関わる病気でないことを、ありがたく思ってくれていたことに間違いありません

 

あなたのお子さんも、必ず、将来、あなたに感謝してくれますよ。

しっかりお子さんの目を見つめて、とろける笑顔で接してあげてください。

命があるだけでそこにいてくれるだけで

ありがたいことなのだと気付いてください。

 

“私を強くしてくれるために生まれてきてくれたのね。ありがとう。

お母さん(お父さん)も、お前を全力で守ってあげるからね。

生まれてきてくれてありがとう。”

 

そう、寝顔に語り掛けてあげてくださいね。

 

明るい未来に、また、一秒、一分、と、あなたは一歩ずつ近づいています。

少しだけ・・・・何ごとも時間がかかることだけは理解してください

“時間の経過” は認めてあげてくださいね。

 

今のこのひと時を、

振り返ると本当にあっと言う間に過ぎている “子育て” という貴重なこのひと時

思いっきり味わってください。

ありがたく、かみしめてください。

 

お子さんがそばにいてくれること

命あってそこにいてくれることに幸せを感じてくださいね

 

今日も、子育て、お疲れ様でした!

 

 

 

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A Message for the Parents with Atopic Dermatitis Children, From a Used-to-be a Mummy Baby