アーカイブ | 2019年6月6日

脱ステ・超お役立ち情報 - その8

Facebook にシェア
reddit にシェア
LinkedIn にシェア
LINEで送る
Pocket
このエントリーをはてなブックマークに追加

 

阪南中央病院皮膚科では、佐藤健二先生が、外来と入院患者を診終わられてから、

お疲れでも、夜間に入院患者のために学習会を開いてお話をしてくださることがあります。

そして、その内容がいつも素晴らしいので、

入院患者さんたちが必死にノートをとり、公開してくださっています。

 

今回は巷でよく聞くプロアクティブ治療についての先生のお考えです。

今回の書記さんは、佐藤先生の大阪弁の神髄をも再現してくださっています。(笑)

カッコイイですね。

せっかくですので、そのまま公開させていただきます。

とっても深い、素晴らしいお話です。

(話し言葉の筆記ですので、多少加筆しておりますこと、ご了承ください。)

 

**********************

 

 

プロアクティブ治療について

 

プロアクティブいうたら、ニキビの治療の薬の名前なんですけども、

アトピーの時には、プロアクティブ治療というのは全然違う意味で、

悪くなる前に前もって予防的に薬を塗るという方法を示したものなんですわ。

 

実際にどういうことをするかというと、

一番最初の時に毎日かなり強い薬を塗って、炎症を治めてしまう。

で、炎症が治まった段階で、その後、1日おきとか2日おきとか

だんだん間を空けていくということなんだけれども、

悪くなったら困るので、1日おきなんかで、塗るでしょ。

それでちょっといいかなと思ったら、今度2日おきとかに塗っていく。

悪くなったら、その時は塗るんだけれど、

例えば3日間空けて塗ると悪くなるということだとしたら、

2日空けるしかないということで、それでしばらく行くわけよね。

もうだいじょうぶかなと思ったら、3日空けて、それでいけたら、しばらくいく・・・という。

それでも大丈夫だったら、4日空けてという具合に、順番にずっと減らしていこうということで。

 

まあ、できるだけ塗る回数を少なくして

薬代も少なくして、という発想でやっているんだけれども、

その発想自体はそんな悪いわけじゃないわけよ。

 

ただ、そのプロアクティブ治療というのを、かなり客観的に見た場合に、いろんな問題点がある。

例えば、この中で、一日塗るのをやめたら、ドカッと悪くなった人がいてたでしょ?

となると、ずーっと塗らないとしゃあないということになるわけよ。

だからそっから先、まずね・・・

プロアクティブ治療というものを最初に言い出した人の論文にも出てるんやけれども、

やめようとしてやめられへんかった人は、まず、除くわけよ。

だから、めっちゃくちゃ重症の人は関係なくなってしまうわけ、プロアクティブの方から。

軽い人やったら、空けて塗っていけるというとこになるわけね。

 

で、それでちょっとずつ減らしていくというのはええけども、

そしたら、いつ辞めるのかというのが問題になるわけね、患者にとってみたら。

悪くならないために前もって塗るというわけやから、

いつまでたってもやめるということができへんわけよ。

悪くなったら塗らないかんと思ったら、悪くなる前に塗っとこうというわけだから、

だから、いつ辞めることができるかということがわからんので、

いつまでたってもずーっとやるということになるわけや。

 

で、そこで・・・。

ステロイドをやめる場合に、

いっぺんにポーンとやめてしまうというやり方を入院したらしてるけども、

外来の場合は、そういうやり方はしないわけよ。

その時にどんなやり方をするかいうたら、やっぱ同じようなやり方するわけ。

ちょっとずつ間を空けていくの。

 

ところが、そのプロアクティブ治療と

私がやっているステロイドをやめるための塗り方というのは、何が違うかというのを理解しようと思ったら、

一つは、一番重要なことは、前にもちょっというたことあるけれども、

(副腎皮質のステロイドを作る臓器は、みんな副腎やと思うとるでしょ、それはみんな知ってるんやろね?)

ステロイドを作る臓器は人間の体の中で腎臓の上にある副腎やということ。

で、副腎だけなのかいうことが問題なの。

で、前に言うたけれども、人間の皮膚もステロイドを作るんです。

だからステロイドを作る臓器は二つあるの。

 

内服したり点滴したりして、ステロイドが副腎に行ったら

副腎でステロイドを作るというのを抑制するからね、

膠原病の人だったら、内服を相当長期にするので、副腎でもステロイドが作られなくなるので、

やめることができないから、ずーっと薬飲み続けることになるわけね。

そやけども、皮膚の場合は、どうなるかということ、これもね、

やっぱり同じようにステロイドをつけると、副腎で作られなくなるのと同じように、

(皮膚でも)作られなくなってくるはずなんよ。

だから、ステロイドをやめたとき、どかっと悪くなるわけでね。

 

ところが、塗るのをやめて悪くなるという状態がなかったら

ステロイドを皮膚が作らないようになるわけよね。

作らなければならない炎症があるからこそ、ステロイドを作って行こうとするわけよね。

 

それでないと、その皮膚は良くなっていかないわけよ。

だから、ステロイドを塗りながらちょっとずつ減らしていく場合に、

絶対必要なのは、必ずある程度悪くさせるということが必要なわけ。

だから、塗り薬を塗って3日くらいに、3日に1回、4日に1回と空けて悪くなったら、

その時点で、悪くならないように必死に塗りましょうということではなくて、

それくらい起こるんだったら、その間隔で次はもうちょっとまた空けて塗りましょうかという、

そっちの方に移って行かないとあかんねんけども、

それをプロアクティブ治療はしないわけよ、炎症を起こさせようとしない

だから、皮膚が自分で(ステロイドを)作ろうとすることを抑制してしまうわけよね。

自分で(ステロイドを)作らせようとしたら炎症を起こさせんといかんから、

いったんは悪くなるくらいまで、やっぱり間を空けないとあかんということ。

そこの違いがあるわけよ。

それでやっていくと、だんだん間を空けていって悪くなって、

その皮膚がステロイドを作る能力が出てきたら何にもなしでも行けるようになる

そこの違いがわからないと、プロアクティブ治療というのに対する批判はできない。

 

重要なのは、ステロイドホルモンを作るのは、副腎だけやと思っとったけど、

実際は副腎だけじゃなくて皮膚でも作られている

で、皮膚にステロイドを塗ると皮膚がステロイドを作ることをさぼってしまうので

ステロイドを塗るのをやめたらどかっと悪くなる

そやけど、いったんステロイドを使っておって、

状態がステロイドを作らなくなっている人に、元のステロイドを作らせるためには

皮膚はやっぱり炎症を起こしてそこに、炎症というストレスを与えてやらないと

ステロイドを作ってこないということ

そこの違いをちゃんと分かっていておいて欲しいということ。

 

だから、ちょっと難しい話ではあるけれども、そういうことがわからないと、

あなた方が今後、変な医者にかかった時に、説明ができない。(笑)

まあ、変な医者にかからなくて済むように頑張って、よくなればいいんやけどね。

今日の話はそれだけです。

 

 

**********************

 

 

入院患者さんから佐藤先生への質問

 

 

Q,  ぜんそくの治療で吸入ステロイドを使っていたが、それもプロアクティブ治療か?

今後、ぜんそくの治療としては、そういう治療でない医師を探せばよいのか。

A.  それもプロアクティブ治療。ガイドラインではそうなっているので、

どこの医者に行っても同じではないか。

 

Q.  運動と水分制限は、退院しても続けないといけないのか?

A.  一生続けないといけない。

男の人はお酒に注意。ビールは95%水。焼酎のストレートなら水分は1/4。

ウイスキーストレートとかが水分の観点からは良い。

以前、退院祝いに飲んで、入院時と同じ状態になった人がいた。

病院では、食事の水分量が一定しているので、1500mlとかを守ればよいが、

家だと、食事によって食物中の水分が変化してしまう。

鍋とかは水分が多いので注意。

 

Q.  抗ヒスタミン剤の飲み方:

症状が出たらすぐに飲んだ方が良いのか、治まるのを我慢して待った方が良いのか?

A.  アトピーには抗ヒスタミン剤はあまり効かない。じんましんには効く。

薬は飲んでも効果が出るのに30分から1時間かかる。

すぐ飲んで治っているというよりは、時間で自然と治っている状態ではないか。

同じ薬は飲み続けると効かなくなってくることがある。

数種類を持っておき、ローテーションするなどするのが良いのではないか。

 

Q.  水分制限はそのままが良いのか?

A.  そのまま続けるべき。水分が多くなると皮膚が傷つきやすくなる。

夜は控えた方が良い。

 

Q.  消毒はしたほうが良いのか?

A.  病院でも、以前のように消毒はしない。

手術でも、手術後は清拭で洗浄するくらい。     

ばい菌を減らすための消毒はアトピーには効果がない。

 

Q.  水分と炎症の関連性について

A.  水分が多くなると炎症を起こす確率が高くなるが、

水分が炎症を起こしているわけではない。

炎症の原因は、いっぱいあり、よく話を聞かないと複雑でよくわからない。

日光の場合は、肌が外に出ているところだけに出るはず。

食べ物は炎症にあまり関係ない。

 

Q.  ステロイド内服に関して、血液検査で値が正常値になったが、元に戻ったと思ってよいか?

また、訓練の方法はあるか?

A.  強いストレスの時に、体がステロイドを高く出せるように戻っているかどうかが問題。

訓練としては、ストレスをかけるしかない気がする。

ATCHというホルモンを注射してコルチゾールをたくさんつくるかどうかという検査はあるが、

そういった検査は最近はやっていないようだ。

 

Q.  子どもの水分制限について

A.  小学生前は制限はしない。

 

Q.  運動の頻度は?また、歩く/走る以外の方法は?

A.  1週間に3回、120拍/分 x 30分を目安に。少なくとも週1日は休みは作ったほうが良い。

初めは筋トレよりも有酸素運動が良い。

踏み台昇降、ラジオ体操、縄跳び、入門としてストレッチ/ヨガ等。

 

                   

                2019.05.17『とまり木』より

 

 

**********************

 

今回も、とっても勉強になりましたね。

阪南の入院患者の皆さん、佐藤先生、いつもありがとうございます!

 

たくさん教わって、みなさんも早く良くなってくださいね。

 

 

今日も素晴らしい一日を!